エルヴィン最後の演説
このエルヴィンの神(もしくは悪魔の)演説。
どんなに夢や希望を持っていても
幸福な人生を送ることができたとしても
岩で体を打ち砕かれても同じだ
人はいずれ死ぬ
ならば人生には意味が無いのか?
そもそも生まれてきたことに意味は無かったのか?
死んだ仲間もそうなのか?
あの兵士達も…
無意味だったのか?
いや違う!!
あの兵士に意味を与えるのは我々だ!!
あの勇敢な死者を!!
哀れな死者を!!
想うことができるのは!!
生者である我々だ!!
我々はここで死に 次の生者に意味を託す!!それこそ唯一!!
この残酷な世界に抗う術なのだ!!
兵士よ怒れ 兵士よ叫べ 兵士よ!! 戦え!!80話「名も無き兵士」
ちょっと振り返って、その言葉の「重み」についてややシリアスに考察。
そこから、エルヴィンという人間の人物像について。
1.エルヴィンの初めての真実の声
エルヴィンの夢
エルヴィンはずっと、「人類のために心臓を捧げよ!」と仲間を鼓舞してきた。
しかし内心では、父親の言った仮説を証明すること、そのために「世界の真相を知ること」が最重要目的だった。
ある意味、そっちのほうが重要だから、団長の役割も感情に振り回されずに出来たのかもしれない。
何かは分からなかったけど、それをリヴァイは感じたんですね。
こいつは俺には見えない何かを見ている
アニメOAD「悔いなき選択ー後編ー」
だから、エルヴィンにとっては、身近なことや出世にも興味はなかっただろうし、だから「女よりも巨人を選んだ」のだろうし、目的のためなら平気で「博打」も打てた。それだけ人生のすべてを占めていた。
そのエルヴィンの目的を振り返ると、一つは父親の死に対する自責の念もあったでしょう。
そして、なぜ真実に近づいただけで殺されなければならなかったか?。
父親の仮説を証明するとともに、その死の真実も確かめること。
父親の死によって、彼の夢は必ず成さないとならない使命、宿命となったと言える。
ただ、それが宿命だったとしても、彼は真実を追求することこそが、心からの望みだったと思う。
指揮官としての使命
この女型捕獲作戦の時に彼が仲間を切り捨てたのも、人類のためであると同時に、たぶんそれ以上に、自分自身の目的を果たすためでもあった。
強固な目的があったからこそ、情に流されずに決断できる。
皮肉なことにというべきか、それが彼の資質と相まって、「人類のために心臓を捧げる指揮官」というもう一つの使命・役割を作っていった。
彼と並ぶ上官たちは、その背後にある彼の動機を分かっていた。
君は死にたくなかったのだよ(ザックレー)
わしは、おぬしと違って賭け事は好まん
また、おぬしらと違って己よりも生き残る人類の数を尊重しておる(ピクシス)
夢をあきらめ、心臓を捧げたゆえの重み
そのエルヴィンが、最後に自分の夢をあきらめ、「人類の未来のために自分を犠牲にする」選択をした(もうそれしかなかった。そこには、犠牲にしてきた仲間の「重み」があった。そしてリヴァイが最後に後押しした)。
ゆえに、あの演説は、エルヴィンが言ったように「一流の詐欺師のように体のいい方便を」並べたわけではなく、
初めて「本当に人類のために身を捧げる」ことを決めたエルヴィンの真実の叫びだった。
だからこそ、新米兵士を地獄に導く重みを持ったのだろう。
どんなに夢や希望を持っていても
我々は(私は)ここで死に 次の生者に意味を託す!!
ここに来て、アルミンの言葉はまた別の意味を帯びてくる。
エルヴィンにとって、人間性(情)を捨てることは、ある意味たやすいことだった(たやすくはなかっただろうが、その重責を使命が支えていた)。
しかし、最後に今度は、自らの夢と命をも捨てるという決断をしなければならなかった。
そう決断させたのは、切り捨ててきたはずの仲間の存在であったというのは、やはり皮肉にというべきか。
2.クルーガーのセリフを思い出すね
その行いが報われる日まで進み続けるんだ
死んでも 死んだ後も88話「進撃の巨人」
ここでの「死んだ後も」進みつけるんだ、は、進撃の巨人を継承する人間だから、というのも大きいでしょうが、進撃にはこのニュアンスがよく出てくる。
個人の意思が、個人の生を越えてつながっていくという。ある意味、当たり前の話でもあるけど、それを際立たせる。
あと、今まで気づかなったけど、よく考えたらクルーガーもこれ、死ぬ間際の言葉なんですよね。
これも、グリシャに対して言ってるのと同時に、自分自身にも言ってたのかも。
死んだ後も、「自分もお前とともに進み続けるんだ」と。
響く言葉ってこういうものですね。
3.ユミルの言葉と対照的
ユミルのヒストリアへの手紙の中の言葉。
そう 何の意味もない
だから世界は素晴らしいと思う89話「会議」
これと対照的な感じもします。
かたや目的を求め続け、(最後に)人類のために身を捧げ、かたや意味や役割から自由である世界を生きた。
どちらも、自分の生き方を全うしたとは言えるだろうけど、ある意味、対照的。
*ユミルの過去はエルヴィンに近い(役割に自分を捧げたところとか)。でもエルヴィンが生まれ変わったら、ユミルみたいに自由に・・は想像できないな・・。
‥^^; でも、頭の隅で考えてそうなエルヴィン。
自由度で言えば、圧倒的にユミル。ただ、成就こそしなかったが、エルヴィンのように、大きな目的があるゆえの幸せ、はあるだろう。
結論的に、エルヴィンという人物は
エルヴィンは宿命の中で夢に生き、夢のままで逝った「伝説の指揮官」にならざるを得なかった男、でしょう。
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