マンガ17話、アニの「それが人の本質だからでは?」。
彼女は何が言いたかったのか?
それが見えると、「進撃の巨人」という物語の、テーマの一つが浮かび上がってきます。
それを読み解くには、彼女のセリフを追うとともに、彼女の心理状態、その背景を見る必要があります。
ゆがんだ親子関係と、それを認識している彼女。どうにもならない感情。
そのあたりについて、心理的な解釈をふくめての考察。
「それが人の本質だからでは?」
改めてアニのセリフ。
「なぜかこの世界では、巨人に対抗する力を高めた者ほど巨人から離れられる どうしてこんな茶番になると思う?」
「それが、人の本質だからでは?」
17話「武力幻想」
この言葉の本当の意味は、アニメではカットされている、この続きのシーンから分かると思います。
「私の父もあんたらと同じで… 何か現実離れした理想に酔いしれてばかりいた… 」
「幼い私は心底下らないと思いながらも…この無意味な技の習得を強いる父に逆らえなかった…」
ポイントは、「現実離れした理想に酔いしれていてばかりいた」。
タイトルも「武力幻想」。
おそらく、アニの父親は過去のエレンパパに似た「エルディア復権」の理想でも持っていたのでしょう。
その理想のために、アニに過酷な訓練を課した。本人の意思などお構いなしに。
グリシャとジークの関係と同じですね。
アニのこの虫を踏み潰すシーン。
これは彼女の残虐性というよりは、弱いものへの抑圧(ある種の暴力)という父親の行為を繰り返している、と捉えることができます(心理学的には、世代間連鎖と言えます)。
ジークも父親を思い出して怒りながら(半ば楽しそうに)投石で殺してました。あれも本質は同じです。
もちろん、その背景にはマーレによる抑圧、という構造はありますが。
さらに、彼女の気持ちがはっきり表れてるのが、この場面。
きっかけがあれば、抑圧された怒りは暴発します。
きっかけはあくまできっかけなので、ほとんど父親に言っているのと同じこと。
「偉そうに理想を語って、あんたが私にしたことはなんだ?」と、(強く言えば)そう言ってるのだと思います。
そして、その父親、または上に従うしかない自分へのぶつけどころのない怒り。
ただその中で、「生きて帰んなきゃいけないんだよ」には、彼女の父親への思いが垣間見えるような気がします。
「人の本質」の意味
話が父子関係になりましたが、上のセリフもこれが背景にあるでしょう。
つまり、ここでアニが言ってる「人の本質」とは・・
良かれと思って理想を掲げる人間。それを親が子に強いてしまうと、その理想が子どもを道具にしてしまう。
子どもは子どもとして愛されず、抑圧される。
という例のように。
広く言えば、「頭で考えた理想・理屈が先走って、目の前の現実から離れてしまう」。
その不幸、または滑稽さ(強いものほど巨人から離れるのは、滑稽ーばかばかしくておかしいーですね)。
それを言っているのではないか、と自分は考えます。
*人間に自我(思考)がある限り、ついて回る問題ですが、解放のカギは奥深い感情です。だから、一度父親が謝ったくらいでは、かんたんには解消できないところがある(結局、戦士の義務は果たさないとだし)。
でもアニの父親は、きっと後でそのこと(子どもに勝手に理想を強いたこと)に気づき、アニに謝り、「帰ってきてくれ」と言ったのでしょう。
そう考えると、そしてアニの気持ちを思うと、なかなかに切ないものがあります。
そんなアニは、父のもとに帰ろうとして帰れず、そして水晶化しました。
全てを拒絶した彼女、でも最後に父親に会うわずかな可能性に賭けて水晶化したように思えます。
アニは父親に会えるのか
アニのささやかな望みが叶うのか・・
そこはやはり、エレンがカギを握っている、でしょう。
格闘術は、アニと父親の唯一の接点。おそらく、唯一父親に認められ褒められたもの。
エレンって、けっこう意外と洞察力高い^^;ので、アニの気持ちは理解しているはず。
何とかしようとはするはず、と予想。ここは、やはり会ってほしい。
追記:まあ「私もそうだ!!」だから、分かりやすく「自分のことしか考えられない人間のエゴ」と言ってもいいのかもですけどね。
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